2015年 12月 29日
【 宮島レポート(全文) the report by kishi 】 |
◆10月16日
所長と私は6月におこなった、宮島口国際コンペの公開審査の見学へ広島に訪れました。
実際の公開審査は明日行われる予定で、本日はコンペの入選作品と
予備審査通過作品のパネル展示が行われているということで行ってみることに。
我々の作品は残念ながら一次審査通過という結果でした。
しかしながら他の作品を見学することで我々には思いつかなかったアイディア、クオリティの高いイメージ表現、パネル全体のまとめ方に至るまで、非常に勉強になりました。
その後はコンペの主題でもある厳島神社の見学へ向かいました。
運がいいのか悪いのか、私の初の厳島神社参拝は干潮時。
事前に調べていなかったとはいえ、イメージしていた海の上にそびえる大鳥居も、
水面が近くに感じる回廊もありませんでした。(少々残念でした…)
しかし意外なところに厳島神社とはまた違う美しいものがありました。
それは厳島神社へ向かう道中にある商店街です。
ここにはお土産扱うお店に始まり、名物のもみじまんじゅう、焼き牡蠣なども
お店がずらっと軒を連ねています。
そんな中、目につくのが街路を覆う日除け幕。
オーニングともアーケードとも違うその屋根状の幕は街路を挟んだ商店の集まりを
一体的な空間へと昇華しているようにも感じました。
そしてなんとこの幕、可動式。よく見ると後付のようで、店から街路を挟んだ
向かい側の店までワイヤーが取り付けられており、そこにフックを掛け幕が
カーテンのように稼働する仕組みになっています。
建物と一緒に施工されたものではないので取り付ける位置や間隔、高さや角度に
むらができており、必然的に不規則な状態で幕が連続しています。
その必然的な不規則さは意図的なデザインではありませんし、プロポーションが
整っているわけでもありません。
不規則に位置しているので隙間からは雨も降ってくるでしょうし、とても計画的な
設計とは言えないと思います。
しかし一方でその幕や空間は商店街の多くの人々によって生まれた自然現象の
ように感じました。
幕を張るという操作だけで個々の商店を結び付け一体的な商店街として昇華させた
ような自己的にはならない社会性のあるデザインに私は非常に惹かれたのだと思います。
◆10月17日
本日は研修の目的でもある宮島口国際コンペの公開審査の見学に向かいました。
入選作品は計8作品。
その中からプレゼンを行い3作品が優秀賞、5作品が佳作として選出されるというもの。
各入選者は限られた時間の中でプレゼンを行っていました。
賞の結果に関わらず感じたことは、プレゼン対策度の違い。
選考から落ちた私がいうのもお門違いかもしれませんが、
プレゼン対策の度合いは各プレゼンテーターによりさまざまに違いを感じました。
賞の結果にどの程度影響しているかは想像がつきませんが、
各プレゼンを見学しているうちにプレゼンの重要さ、
言い換えれば人に自分の考えや思いを伝える難しさを再認識させられました。
この伝えるという状況は仕事の中など日常的に起こることです。
規模はこのコンペのような大規模なものから、
日常的な小規模なものまでさまざまあると思いますが、
規模に関係なく一つ一つ丁寧に取り組んでいく大切さを改めて感じました。
◆10月18日
折角広島まで来ているので、ドラマ「マッサン」の撮影場所にもなった竹原を
訪れることにしました。
竹原の町並み保存地区には江戸時代から明治、大正に掛けての街並みが残っており
そちらを見学することにしました。
良い街並みを歩いている時にいつも気になるのが路面。
アスファルトでないのはいいのですが、石とタイルの貼り分けが上の写真ですと整って
いるのですがメインの通りから少し外れると貼り分けがちぐはぐになっていました。
タイルというのも和風な街並みとちょっとずれているのではと思いました。
(瓦敷きや洗い出しの方が良かったのでは…)
街並みだけなく古民家の中も見学することができます。
上の写真は森川邸で撮影したものです。
障子や欄間の組子が非常に繊細で美しく、竹原の人の建築に対する思いが
伝わってきます。
宮島研修はこれにて終わりを迎えました。
この度の研修にて課題として感じたことは、今そして未来を見据えながら
昔ながらの古き良き文化や建築、街並みに対して何ができるか。
そして如何様に保存して、守って、変更して、補っていくのか。これにつきます。
岸真人
*Photograph by kishi
*原文に改行を加えています。
by takt-t
| 2015-12-29 12:29
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